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2023.01.06

# 看板# 製品

看板(屋外広告物)の安全点検義務化経緯と点検内容

サイン工事④

近年、老朽化等による屋外広告物の落下事故が多数発生しており、全国的に屋外広告物の安全性の確保が課題となっています。万が一、企業が所有する看板が落下し、第三者に被害を及ぼした場合、長年積み重ねてきた企業の信頼を一瞬で失うことになりかねず、多額の賠償金や、風評被害により、事業の継続が脅かされるような事態を招く可能性があります。2015年2月に札幌市において発生した事故では、ビルの外壁に緊結された看板の一部が落下し歩行中の女性の頭部に当たり重体となりました。
本事故をうけて、屋外広告物設置許可継続申請時における有資格者またはそれに類する者による本体・接合部・支持部等の点検実施と報告が義務化されました。詳しい経緯は次の通りです。
<経緯>
▼2015年2月 札幌市でビルの外壁に緊結された看板の一部が落下、歩行していた女性の頭部に当たり重体となる事故が発生。
▼2015年2月17日 国土交通省が、屋外広告物の所有者等に対し、実効性のある点検の実施と老朽化による倒壊・落下のおそれがある広告物の速やかな撤去、改修等、適切な措置を講ずるよう指導することを地方公共団体に依頼するとともに、屋外広告物の落下等の事故が発生した場合の緊急連絡体制を構築。
▼2015年9月 屋外広告物適正化推進委員会が、屋外広告物の所有者向けに日常管理の留意事項や日常点検のチェックポイント等をとりまとめ、企業や店舗等の経営者が看板にかかわるリスクやハザードから身を守り、安心して事業を展開できるようサポートする目的で「オーナーさんのための看板の安全管理ガイドブック」を公開。
▼2016年4月 国土交通省は、屋外広告物の所有者等による点検の促進、許可更新等の申請を行う場合の点検結果の提出義務化等を内容とする屋外広告物条例ガイドライン(案)を改正。
▼2017年7月 国土交通省 都市局 公園緑地・景観課が、屋外広告物の点検の実効性を高めるため、許可更新の際の安全点検報告書における点検箇所や点検項目等をとりまとめた「屋外広告物の安全点検に関する指針(案)」をとりまとめた。
これ以降、地方自治体が屋外広告物条例の改正・制定を行っている。

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「だいぶ前に作った屋外看板がある」、「設置後のことは各店舗にそれぞれ任せている」という方がいましたら、ぜひ最後まで一読ください。何かあってからでは…遅いのです。

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看板等の広告主、設置者等の安全管理義務・点検内容

屋外広告物(看板)等の設置には、原則として条例に基づく許可を受ける必要があります。東京都の条例では屋外広告物等には【屋外広告物管理者の設置】が義務付けられており、【屋外広告物(看板)等の広告主、所有者、広告主等から請負い広告物等を設置する者】については補修その他必要な管理を行ない【良好な状態】に保持する義務があります。構造又は設置の方法が危険な広告物を設置することや落下や倒壊の恐れのある広告物等の管理義務を怠ることは条例で禁止されています。上記の義務に違反した者は【30万円以下の罰金】に処される場合があります。
<参考>国土交通省「オーナーのための看板の安全管理ガイドブック」(令和元年10月)
東京都都市整備局 屋外広告物のしおり等

 広告物等の設置許可を受けた後に、継続または変更許可申請をする場合【屋外広告物自己点検報告書の提出】が必要となります。定められた規模の広告塔・広告板及びアーチ・装飾街路灯の場合は【屋外広告物管理者の点検】が必要となります。許可期間経過後に継続して屋外広告物等を設置する場合には改めて【許可申請】が必要です。
一定規模以下の広告物等については許可不要のものもありますが、この場合でも【定期的な自己点検】を行う必要があります。

許可更新の際の安全点検報告書の提出等について

 屋外広告物条例を制定している地方公共団体では、屋外広告物の所有者等が更新 許可申請を行う際に、安全点検報告書の添付を求めている場合が多いです。しかし、安全点検報告書の書式は行政毎にまちまちで、点検項目・点検内容が6~7項目程度しか設定していない地方公共団体も多くありました。
そのため、国土交通省 都市局 公園緑地・景観課が屋外広告物の点検の実効性を高める為に、「屋外広告物の安全点検に関する指針(案)」に許可更新の際の安全点検報告書における点検箇所や点検項目等をとりまとめ、屋外広告物条例を所管する地方公共団体に向けて技術的助言を送付しています。技術的助言を受けて屋外広告物条例を改正を行う地方公共団体も増えてきました。劣化等が起こりやすい 箇所を踏まえた点検箇所・点検項目等は次の通りです。

(1)点検箇所・点検項目 
〈点検箇所〉基礎部・上部構造

〈点検項目〉 
・上部構造全体の傾斜、ぐらつき 
・基礎のクラック、支柱と根巻きと の隙間、支柱ぐらつき 
・鉄骨のさび発生、塗装の老朽化

〈点検箇所〉支持部 

〈点検項目〉 
・鉄骨接合部(溶接部・プレート) の腐食、変形、隙間 ・鉄骨接合部(ボルト、ナット、ビ ス)のゆるみ、欠落

〈点検箇所〉取付部

〈点検項目〉
・アンカーボルト・取付部プレートの腐食、変形
・溶接部の劣化、コーキングの劣化等
・取付対象部(柱・壁・スラブ)
・取付部周辺の異常

〈点検箇所〉広告板
〈点検項目〉
・表示面板・切り文字(※)等の腐食、破損、変形、ビス等の欠落
※ シート、金属板、プラスチック板等を切り抜いて作った文字等。
・側板、表示面板押さえの腐食、
破損、ねじれ、変形、欠損
・広告板底部の腐食、水抜き孔の詰まり

〈点検箇所〉照明装置
〈点検項目〉
・照明装置の不点灯、不発光(※)
※ 電球がつかない状態を不点灯、蛍光灯やネオンがつかない状態を不発光という。
・照明装置の取付部の破損、変形、さび、漏水
・周辺機器(※)の劣化、破損
※ 分電盤、配線、変圧器(トランス)、スイッチ等。

〈点検箇所〉その他
〈点検項目〉
・付属部材(※)の腐食、破損
飾、振れ止め棒、鳥よけ、その他付属品。
・避雷針の腐食・損傷

(2) 安全点検報告書による確認のための留意事項
*国土交通省が屋外広告物条例を所管する地方公共団体に向けて出した技術的助言となります

<様式>
▼点検者の氏名・住所・電話番号・資格名称を記載する欄(項目)を設ける
▼点検者の資格を証する書面の写しを添付させることにより、地方公共団体が屋外広告物条例施行規則等で定める点検者の資格要件を満たしていることを確認すること。

<点検方法>
▼原則として、目視、打診等により、損傷、変形、腐食等の異常の有無を確認させること。

<安全点検報告書>
▼屋外広告物の全景写真を添付させること。
▼必要に応じ点検箇所・点検項目の状態が把握できるカラー写真や補修等を行った箇所の補修前後のカラー写真を提出させること。安全点検報告書及び添付書類だけでは、安全性を確認することが困難な場合屋外広告物の所有者等に対して安全性について確認を行うとともに、必要に応じて現地確認を行うこと。

(3)所有者等における定期的な点検の実施
*国土交通省が屋外広告物条例を所管する地方公共団体に向けて出した技術的助言となります
地方公共団体が屋外広告物の許可更新時に、所有者等に求めている安全点検とは
別に、所有者等に実効性のある点検を年1回程度実施させることが望ましい。

<参考>国土交通省より発行されている「屋外広告物の安全点検に関する指針(案) 

「屋外広告物法」「屋外広告物条例ガイドライン」とは

 前述の通り、国土交通省は、平成28年4月に屋外広告物の安全性確保の為「屋外広告物条例ガイドライン」を改正しています。「屋外広告物条例ガイドライン」とは、「屋外広告物法」に基づく制度の的確な運用を支援していく趣旨から、地方公共団体の参考に役立てるため、屋外広告物法の運用に関する技術的助言として地方公共団体に配布されているものです。
「屋外広告物法」とは、屋外広告物行政における規制の基準を定めた法律であり、実際の屋外広告物規制は、地方公共団体(都道府県、政令市、中核市、景観行政団体である政令市及び中核市以外の市町村)が、屋外広告物法に基づく条例や規則等を定めて独自に行っています。
 
<参考>国土交通省 屋外広告物条例ガイドライン 
  

屋外広告物(看板)の事故事例

前述の通り、札幌市で起きたビルの外壁に設置された突出看板から看板の一部が落下し、被災した歩行者が全治不能の傷害を負った事故につき、店舗の責任者に業務上過失傷害罪を認定し、罰金40万円を言い渡した事故事例により、屋外広告物条例ガイドラインが改正されました。
<参考>札幌地裁 平成29年3 月13日判決 裁判所ウェブサイト

改正のきっかけとなったこの事故(後述の事例1)では、裁判で店舗副店長の刑事責任(業務上過失致傷)を認めています。国土交通省によると、公表を始めた2010年12月以降、看板の落下事故は全国で少なくとも15件に上り、怪我人も10人います。
この札幌市の事故を受けて同省が実施した緊急調査では、自治体から報告があった計約4万8000棟のうち1516棟で看板の補修が必要という結果が出ました。
札幌市で起きた事故は、2014度~16年度で5件(2014 年度:1件、2015年度:3件、2016 年度:1件)です。このうち改正のきっかけとなった事故を含め、事例の詳細をみても看板種別や許可の有無等様々です。

<事例1>発生年月日(発生時刻) 2015年2月 15 日(14:00 頃)
■看板種別   突出看板(長さ 1.5 メートル、縦横 30センチ、重さ 20.7 キログラム)
■表示場所等  札幌市中央区
■許可の有無  許可有(設置年月日:不明)(最終許可年月日:平成 27 年4月 10 日)
■事故等の内容【人的被害の有無】
鉄筋コンクリート7階建てビルの4階の外壁から看板の一部が約 15 ㍍下の歩道に落下
【歩道を歩行中の女性の頭に当たり、頭と首の骨を骨折し、意識不明の重体】
■事故等の発生原因  直接的な原因は不明
■事故後の対応状況  屋外広告物設置者、屋外広告業登録事業者に対し、屋外広告物の適正な設置、管理について文書発出(2015年2月 26 日)

<事例2>発生年月日(発生時刻) 2015年4月 17 日(10:00 頃)
■看板種別   突出看板
■表示場所等  札幌市中央区
■許可の有無  許可無
■事故等の内容【人的被害の有無】
看板の一部と思われる金属片が歩道上(市道)に落下【無】
■事故等の発生原因  直接的な原因は不明
■事故後の対応状況  2015年4月17 日現地確認。許可申請の提出を指導。
同年5月末、許可申請書を受理。

<事例3> 発生年月日(発生時刻) 2015年9月3日(7時 55 分頃)
■看板種別   壁面看板
■表示場所等  札幌市南区
■許可の有無  許可無
■事故等の内容【人的被害の有無】雑居ビルの看板が取り付けられている壁が崩落【無】
■事故等の発生原因  直接的な原因は不明
■事故後の対応状況  2015年9月3日現地確認。同年9月4日看板の撤去を確認

<事例4>発生年月日(発生時刻) 2015年10月8日(16:00 頃)
■看板種別   突出看板
■表示場所等  札幌市中央区
■許可の有無  許可不要
■事故等の内容【人的被害の有無】大型の台風 23 号の影響で暴風警戒中ビルの看板が落下【無】
■事故等の発生原因  直接的な原因は不明
■事故後の対応状況  2015 年 10 月8日現地確認。関係機関から事情聴取
<参考>平成 29 年 11 月 北海道管区行政評価局  屋外広告物等の安全性確保に関する実態調査

まとめ

全国の地方公共団体は、屋外広告物法を受けて屋外広告業者の「登録制度」を導入しています。街の安全確保や良好な景観形成のため、ルールに従って屋外広告物を設置する必要があります。看板設置を依頼するにあたっては、必ず登録を受けた業者に依頼するように促しています。街中にある看板は、戦後の高度経済成長期に設置された看板も多いとされるため、今後、さらに事故のリスクが高くなる可能性もありますので、今一度自社の広告物の安全管理を見直していただければ幸いです。